2024年04月10日

米国に頼り過ぎていたと欧州も気付く

11月の米国大統領選にからんで「もしトラ」が現実味を帯びるなか、欧州やアジアの同盟諸国に不安と警戒心が広がっている。

なかでも、今年に入ってからのフランス・マクロン大統領の変貌ぶりは特に目立っている。

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マクロン仏大統領

2022年2月のロシア軍によるウクライナ侵攻当初は、プーチン大統領と長時間にわたって対話を続け「ロシアに屈辱を与えてはならない」などと、西側からすれば、驚くようなコメントを発していた。

話し合いで解決できると考えていたようだ。まるでロシアの相手は米国であるかのようで、ロシアと国境を接するウクライナをNATOの最重要国とみる当事者意識が低かったことは明らかだ。

しかし、いまや「トランプ党」とも言われる共和党が多数を握る米下院で、ウクライナ支援の軍事予算案が通らず、今年に入っても今に至るまで同案はまだ成立していない。そのためウクライナ軍は砲弾不足に陥り、ロシアとの防衛前線で劣勢に立たされている。

昨年ごろからマクロン大統領のロシア・ウクライナ戦争に対する認識が変わり始め、5月には「ロシアについて警告していた東欧諸国にフランスはもっと耳を傾けるべきだった」と後悔とも聞こえる発言をしている。

要するに、トランプ氏の大統領復帰の可能性が高まってきた段階で、この戦争に第一義的に関与すべきは米国ではなく、欧州諸国なのだという現実直視に意識が転換したのだろう。


つまり、最大の同盟国の民意が「アメリカファースト」に傾斜していくなかで、いつまでも米国に頼ってはいられないという危機感が生じた。NATOのストルテンベルグ事務総長もNATO全体でのウクライナ軍事支援の計画を発表している。

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ストルテンベルグNATO事務総長


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マクロン大統領はプーチン大統領と交渉するうちに、相手の言葉のウソや不誠実さに気づき、ロシア大統領への不信感を募らせた。また、アジア太平洋諸国における中国の脅威が、この地域に留まらないことにも気づいたようである。

第一、中国はロシアを裏で支えているのだから、経済を優先して中国を刺激しないように批判を弱めれば、ロシアは益々戦場での軍事的優位を強め、ウクライナは苦戦を余儀なくされるという結果になる。

欧州でもだいぶ前から中国の脅威が指摘されていたにもかかわらず、仏大統領は米国のアジア太平洋地域への関与が単に米国だけの利害でしかないと思っていたようで「欧州は米国のポチ(言葉は違う)ではない」と反発するような発言をしたことにも、ひどく驚かされた。「この人はアジアや中国のことをまったくわかっていないのだ」と。

周辺諸国への脅しや嫌がらせは、ロシアと似たり寄ったりなのだが、地理的な遠さで関心も薄く、実感もなかったのだろう。それが今は、ロシアに対しては欧州第一の強行論者になっているのだから、逆の意味で驚かざるを得ない。

NATO軍のウクライナ派兵を示唆するような言動は、ロシアを刺激し過ぎるとドイツなど他の欧州諸国が慌てふためくほどである。もちろんバルト三国やフィンランドなど、ロシアと国境を接する国々にとっては、ロシアをはっきり脅威と捉えるフランスの変化は歓迎すべきことだろう。

こうした過去に侵略された歴史を共有する諸国は、ウクライナが敗れれば、次は「わが国」というロシアへの恐怖心を今も抱き続けているのだ。スウェーデンも200年間の中立政策を転換してNATOへの加盟を決定、ロシア寄りのハンガリーの反対でフィンランドには遅れたが、今年に入って申請・加盟が認められた。

いずれにしても、ロシアも中国も専制主義国家であり、言論の自由がない国である。この二国が協力し合うのは軍事的にも、政治的にも必然のことなのだ。

ロシアは米国と対立するイランや北朝鮮から公然と軍事支援を受けているが、まだ経済支援にとどまり、軍事支援には踏み切っていないとみられる中国は、今後においてロシアの盛衰を左右するほど大きな存在であることは明らかだ。


南太平洋でフィリピンなどに長期にわたって軍事的圧力を加えている中国はアジア太平洋地域の脅威のみならず、欧州諸国にとっても同様の脅威であるという認識をフランスを含めた欧州諸国が共有し始めたことは、日本にとっても安全保障上プラスになるだろう。

すこし前までは、ドイツを筆頭に欧州が中国との経済関係を強化する政策をとってきたことを考えれば、今回のロシア・ウクライナ戦争によって中国の見えにくい姿が見えるようになってきたことは皮肉な結果ともいえよう。

しかし何よりも問題なのは、これまで自由主義陣営をけん引してきたアメリカの力が弱まり、国内世論が内向き志向に変化してきたことだ。もしトランプ氏が大統領に返り咲けば、この傾向が一層強まることは間違いない。

欧州もそのことを懸念して、その準備態勢を整えようとしているとみられる。つまり、もはやアメリカばかりに頼ってはいられない、という現実を直視するようになった。米国抜きで欧州諸国をロシアの脅威からどう守ることができるのか?


この問題は、もちろん日本の問題でもある。米国のインド太平洋地域への関与はどこまで本気なのか。台湾有事は本当に起こるのか。

また、軍事力強化を続けてミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮と今後どのように向き合えばよいのか。さらに、韓国は大統領が変われば、日本への外交政策も一夜にして変わってしまう国である。再び中国、北朝鮮寄りになれば、日米同盟にも影響が及んでくる。

しかし、これらの問題は今回の主題ではないので、またの機会に取り上げることにする。

国内でも、政治情勢が混乱の極みを迎えており、先が見えない危機にある。世界の情勢はいま、イスラエル・パレスチナ紛争も終わりが見えておらず、加速度的に悪化の一途をたどっている。日本はこうした紛争にどのように関与していけばよいのか、平和解決への道を決してあきらめてはならないだろう。


posted by orion at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際
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