2024年03月08日

米国大統領選に翻弄されるウクライナと同盟国

前回、前々回と、ここで取り上げた二大紛争地域の現況を語れば、ほとんど変わっておらず、ただ話を繰り返すだけになりそうですが、残念ながら、以前よりも悪化しているのは明らかです。なぜ悪化しているのかという点について、その原因を探ってみようと思います。

まずロシア・ウクライナ戦争

ウクライナがやばいです。東部戦線では、要衝アウディーイウカがロシア軍に制圧されてしまい、ウ軍は撤退を余儀なくされました。去年6月から開始された反転攻勢は失敗に終わり、現在はロシアが攻勢に、ウクライナは守勢に転じています。

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その要因は作戦そのものに無理があった、欧米との意見の相違、ロシアが構築した三重もの防衛線を甘く見ていたことなどが、明らかな原因として挙げられるでしょう。

第一に、反転攻勢をかけるのが遅すぎた。その間に十分な防衛線を築く時間の余裕をロシアに与えてしまった。もちろん、欧米からの軍事支援が十分ではなかったということもありましょう。

しかし、どこの番組だかの映像を見ましたが、敵の防衛最前線に、いきなりウ軍の戦車隊が列をなして突っ込んでいき、次々と爆破されていくのを見て驚きました。そこには地雷が多量に敷かれているのはわかっていたはずなのに、なぜ地雷対策を講じなかったのか?

さらに、ロシア、いやプーチン大統領は兵の命など顧みない、敵はおろか味方が何人殺されても意に介さない人物であること。ロシア軍も甚大な被害を被ったにもかかわらず、囚人部隊や高額報酬で志願兵を次々に雇ったり、不人気な一般市民の徴兵を避けて、外国から兵を募るなど、目的のためには手段を選ばないやり方をしている。

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そのためウ軍の戦意をいささか揺るがせてしまったと思えます。敵を倒しても、倒しても、新たな波のように押し寄せてくるのですから。

しかし最大の要因は、米国の軍事支援の予算が議会での民主・共和両党の対立で、いまだ採択されていないことでしょう。どうやら共和党の次期大統領候補にほぼ確実とみられているトランプ前大統領が同党の下院議員に「賛成するな」と圧力をかけているようなのです。


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一方の候補者ヘイリー氏に圧倒的な大差で予備選を勝ち進んでおり、彼女は指名候補者争いから撤退を表明。共和党にはトランプ氏に異を唱える者は少なく、もはや「トランプ党」と化しているような状況です。

一方、バイデン大統領は、やはり高齢(81)を不安視する者が多く、さらにイスラエル・パレスチナ紛争で、ガザへの攻撃を続けるイスラエル軍を止めることができず、大勢の一般市民が犠牲になっていることに対して、国内の人権派や国際社会からの非難を受けており、大統領選挙戦にも悪影響を及ぼしそうです。


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では、なぜバイデン氏は次期大統領選に立候補したのでしょう。彼は自分が高齢であることは以前から意識していたようで、一期限りで辞めるつもりだと言っていたと思います。ただし、次にトランプ氏が再び立候補するなら、自分が出るしかない、と。

なぜ、もっと若くて有望な民主党議員が出てこないのか?

相手がトランプ氏では、そのパワー、カリスマ、知名度において、とうてい勝ち目はない。あの大口で相当な攻撃も受けるだろう。今、火中の栗を拾わなくても、次の次を狙えばいい、と思ったとしても不思議ではありません。

民主党員も、トランプ氏と対抗できる候補者は、現大統領であり露出度も高いバイデン氏しかいない。たとえ高齢であることに目をつぶっても、他に選択肢がない、というのが正直な気持ちなのかもしれません。

共和党有利な選挙区においても、バイデン氏なら勝利できそうな州もあるという。選挙資金収集能力も考慮されているのでしょうか。

話をロシア・ウクライナ戦争に戻すと、いま盛んに言われている「もしトラ」「ほぼトラ」になり、これが現実になるいう想定のもと、欧州同盟諸国でもその対処法を密かに協議しているようです。

ウクライナを含む欧州の安全保障には、きわめて消極的なトランプ氏であり、現在のウクライナの窮状は、プーチン氏を持ち上げてロシア寄りとも思えるトランプ氏が間接的にもたらしているとも言えます。


こうした人権意識が薄く、経済的な損得でしか物事を見られない人物が、米国のような超大国の大統領に再任されたら、今後の世界はどうなっていくのでしょうか?

民主主義国も、権威主義国も、等しく独裁的な体制に傾き、それが益々強化されていくように思えて、いささか憂鬱な気分になります。

米国の国際的な影響力は、それでなくとも落ちてきているし、今後もかつてのような「世界の警察官」に返り咲くことはもはやないでしょう。

日本もこうした変化に備える準備と覚悟が必要になってくるでしょう。

それにしても、米国を再び偉大な国に、とはトランプ氏はどういう意味で言っているのでしょうか。米国第一を掲げて、他国、とりわけ同盟国を軽視するような言動を繰り返していたら、そういう国々から尊敬や敬愛を克ち取ることはできません。軍事力や経済力だけで、他国から「偉大な国」と言わしめることができるのか?

この問いは、ロシアのプーチン大統領に対しても投げかけることができます。とくに核の脅しや甚だしい人命軽視、武力による言論弾圧、反プーチン派のナワリヌイ氏の不可解な死を見るまでもなく、彼が時代の潮流に抗っているのは明らかです。

まるで過去の亡霊のように「偉大なロシア」の復活を夢見ています。スターリンのやり方が現代も通用すると思っているようです。イギリスはもはや「大英帝国」の復活など望んではいないでしょう。不可能であることもわかっています。

しかし、彼は核があるから自国を、そして世界を支配できると信じている、いや信じていたか、いまは諦めたか、どうかはわかりません。

今後のロシアがどうなるのか、今月半ばの大統領選に向けてどう変化していくのか、国民の動向も含めて、しっかり注視していきたいと思います。


イスラエル・パレスチナ紛争については、長くなりますので次回に語ることにいたします。もし、次回があれば、ですが。

posted by orion at 17:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 国際
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